江戸玩具
種類:練り物
制作地:東京都荒川区
現制作者:田中作典(たなか さくのり)
田中信太郎( − (初代))・・・・ 田中留吉( −1958(二代目))・・・・ 田中作典(1937− (三代目))・洋子(作典・妻)
代々、桐塑による様々な人形作りをおこなってきた。初代の信太郎は明治25年ころから制作を始めたといわれている。現在の制作者である田中作典さんは幼少期から父田中留吉の仕事を手伝っていた。1954年(昭和29年)から本格的に修行を始め、田中留吉の亡くなった後、家族で犬張り子制作を続けた。昭和63年(1988)荒川区登録指定無形文化財保持者、平成18年(2006)荒川区指定無形文化財保持者に認定された。
犬張り子とはいうが、桐塑生地に胡粉を塗って面相をおこなう手法であるのでいわゆる練り物にあたる。これは信太郎が編み出した方法で、二代目留吉より犬張り子専業となった。現在は7種類の大きさの犬張り子が制作されている。犬張り子以外にも福犬や招き猫などが制作されている。
今回の招き猫もそのひとつである。
※○○張り子や○○練り物のように特に固有名がないので「招き猫尽くし(1999)」にならい、江戸玩具の名称を用いた。
※桐塑による練り物だが、荒川区の技術名でも犬張子となっているので張り子の名称を用いた。
キャッチアイ(キャッチライト)のある目 | 左手挙げ |
組紐による首玉 | 尻尾は描かれていないがわずかに凸部あり |
高さ64mm×横38mm×奥行47mm | |
尻尾の部分の凸部がわかる |
猫は白猫で頭頂部や背面などにわずかに茶色のぼかしが入る。挙げた左手の先端と腕に金の斑が2個所入る。鈴と目も金で描かれている。赤い首玉の組紐は犬張り子の縁打ちに使われるものを使用している。大型の犬張り子では8打ち(ヤツウチ)、小型の犬張り子では唐打ち(カラウチ)が使われているという。尻尾ははっきりは描かれていないがわずかな膨らみからあることがわかる。爪、耳、口などは赤で描かれている。金の目に黒い瞳が描かれており、瞳の中にキャッチライトが金で描かれている。
たしか招き猫は大小2つのサイズがあったはずである。これは小の方に当たる。大は縮緬の前垂れが付く。
犬張り子 (荒川区ふるさt文化館) 左から24cm、15cm、12cm、福犬 |
招き猫と福犬の比較 | |
招き猫 小なので前垂れはつかない 後ろ足の境界に赤いライン |
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福犬 目の色は犬張り子と同じだが その他の彩色は招き猫とほぼ同じ 耳・尻尾は金。 鼻は茶色、口と爪は赤 首に巻かれている紐も 同じものが使用されている。 耳の境界に赤いライン |
招き猫の制作工程や材料も上記の犬張り子とほぼ同じと思われる |
荒川区伝統工芸技術記録映像「伝統に生きる」 犬張り子 平成18年度制作(20分24秒)
参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
つなぐ・伝える〜荒川区伝統工芸品コレクション〜
(令和2年度第57回荒川ふるさと文化館館蔵資料展ハンドブック、2021 荒川区立あらかわふるさと文化館)
映像資料
荒川区伝統工芸技術記録映像「伝統に生きる」 犬張り子 (荒川区教育委員会、2007 )