六原張り子
種類:紙張り子
制作地:岩手県肝沢郡金ヶ崎町六原東町50
現制作者:澤藤範次郎(さわはん工房) 廃業?確認中
初代・・・澤藤範次郎(二代目 (1944− ))
初代(明治44年生 現制作者の父)により1960年(昭和30年)ころ創案され制作が始められた。昭和48年頃より金ケ崎で本格的な制作が始まった。初期には 地元の伝統芸能「鬼剣舞」の面などが中心であったがその後、多種の張り子人形が制作されるようになる。二代目範次郎は初代の父親の元で張り子制作を始める。1980年招き猫の制作を始める。
岩手県には花巻人形がある。近県には堤人形もある。これらとデザインが重ならないようなオリジナル作品に務めているそうである。
猫以外の作品にも「耳くらべ」や各種干支ものなどアイデアがおもしろい張り子が多い。
六原張り子では粘土型製作から石膏型を制作し、そこに地元の成島和紙を裏張りし、型抜き後貼り合わせて彩色して完成する。六原張り子では基本的には胡粉の下地を塗らずに彩色される。
※裏張り:張り子は一般に型の表面に和紙を重ね張りしていく。裏張りは土人形で型に粘土を押し込むのと同じように、
型の凹面に和紙を貼り重ねて成形する作成方法。
ねこ新聞(2021)によれば2020年末で廃業したとのこと。しかし事情が許せば注文に応じて少数制作しているようだ。詳細は不明。
招き猫をコレクションし始めた1993年に工房を一度だけ訪問したことがある。当日はゴ−ルデンウィークにもかかわらず、季節はずれの雪を踏みしめての訪問だった。ジョジョ猫はその際に購入したもの。招き猫は在庫がなかったようで両手招きは東急の郷土玩具展で購入した。
2010年中野ひな市にて 毎年ひな市では陣屋記念会館のこの会場で いろいろな制作者の展示販売がおこなわれている。 この年は六原張り子であった。 作品を補充しているのはいっしょに 張り子制作もしている 範次郎さんの奥様素子さん ※ハチワレのお座り猫はここで購入したものと思われる |
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さわはん工房の澤藤夫妻 |
両手招き | |
両手招き、仔猫は右手挙げ | 黒の斑が入る |
右手の方が高い | 尻尾は不明確 |
高さ191mm×横110mm×奥行106mm 作品には「範」の文字と作品の題名が入る。 シールは東急で開催されていた頃の出品票。 六原の招き猫は基本は両手挙げになっている。 小さな黒い招き猫を抱いているが猫の代わりに鞠などいろいろなパターンがある。 大阪に出品したときに「右手は・・・左手は・・・」とのことで両手挙げになったようだ ということは初期には右手挙げや左手挙げもあったのか? |
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旧 | 新 |
新しいタイプを見たときに違和感があった。 旧作と見比べると旧作は花巻人形などによく見られる口や鼻の周辺が汚れているかまど猫になっていた。 面相も新しい作品とはかなり異なっている。 ただし、ネット上で調べてみると最近の作品でもかまど猫のタイプの方が圧倒的に多い。 はたして年代による違いなのかは不明である。 |
両手招き(面) | |
左手の方が高い | この猫面も右手が高いものと左手が高いものがあるようだ |
高さ130mm×横115mm×奥行き(厚み)30mm |
お座り猫 | |
黒のハチワレ | 首玉は青に白の水玉 |
金色の鈴がつく | 銘が入る |
高さ180mm×横98mm×奥行100mm 購入時期や場所の記録がない。 我が家のメロ君に似た容姿で購入したものか? 背中に銘が入っている。 お座り猫にはいろいろな毛柄がある。 ※2010年中野ひな市で購入と思われる |
ジョジョ猫 | |
白に黒の斑点 | 赤い鼻緒は女の子用 |
尻尾は長い | 青に黄色の水玉の首玉 |
裏の日付は訪問日 | |
高さ mm×横 mm×奥行 mm ジョジョ猫 じょじょとは童謡「春よ来い」(相馬御風 1923)の歌詞で 「赤い鼻緒のじょじょ履いて・・・」と出てくるじょじょと同じものである。 草履の幼児語だそうだ。 脱いだあとの暖かいじょじょの上で寝ているのか、それとも木下藤吉郎のように草履をあたためているのか。 ※これは昔から飼い主のじょじょのの上に猫が寝る家は家内平穏との言い伝えによるものだとか |
鯛乗り招き | |
鯛に座り右手で招く | 左手で鯛の尻尾をつかむ |
赤い首玉に金の鈴 | 白に黒の斑猫 |
高さ130mm×横135mm×奥行74mm 鯛乗りに関しては別のタイプもある |
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扇で招き | |
波間に月の前垂れ | 左手でも小さく招く |
右手に扇を持ち大きく招く | 尻尾はない |
高さ95mm×横68mm×奥行53mm 底に土板が使われているようで 他の張り子に比べると見かけ以上に重さがある |
参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)
福の素(日本招猫倶楽部会報1997 no.13、2001 no.30)
ねこ新聞((有)猫新聞社 2021年11月号−12月号 no.261−262)