江戸小物玩具 鈴幸   
                             鈴幸人形店

江戸小物玩具
 種類:練り物・他
 制作地:埼玉県越谷市
 現制作者:? (四代目)
 
鈴幸人形店
 鈴木幸之助(初代  −1988)・・・・鈴木謙(2代目)・・・・鈴木   (  3代目)・・・・   (4代目)

 鴻巣練り物の流れをくむ練り物および張り子。型は鴻巣と同じものもある。
 初代は浅草の江戸小物玩具店で修行した。浅草小島町でひな人形の頭づくりを専業としていた。関東大震災後に越谷に転居して取引のあった吉徳の奨めでで練り物人形を制作した。小豆粒ほどの極小雛から犬張り子、達磨、蛸などをつくった。犬張り子も張り子より手間のかからない練り物に切り替えていった。戦後は輸出用の小さな練り物を盛んにつくった。それらが売れなくなると達磨をつくるようになった。鈴幸の達磨にはおもりが入れられて起き上がりになっていた。
 鈴幸では現在も練り物と張り子を制作している。張り子は犬だけで、練り物は数多く制作されていて神社のお守りとして授与されているものもある。現在生地作りは岩槻の木目込み人形の生地作り店に依頼し、鈴幸では彩色をおこなったいる(2003)。
 縁起物店や土産店に卸されている以外に神社の授与品にも用いられている。最近は無印良品の福缶としても需要があるという。直販というより製作・卸しをおこなっているので、いろいろな所で販売や頒布されている。どれが鈴幸製であるかは型を知らないと判別は難しいかもしれない。


 下の達磨抱き招き猫はおそらく30年ほど前の1990年代初めに浅草で購入したもの。現在のものと基本的な彩色は変わらないが、面相は若干違いがある。はたして描き手による違いなのか時代の変化なのかは不明である。
 手元に2体あるが、当時車の中に飾って置いたため熱でひび割れが生じてしまった。もう1体は縁起物の熊手を貼り付けて加工してしまった。新たに入手できれば画像を入れ替えたい。またもう1体ひじょうに小さな鈴幸製と思われる猫があるが所在がわからない。
 小さいがひじょうに丁寧につくられている。

鈴幸製の練り物
左手挙げ 右手で達磨抱き 赤の首玉に金の鈴
達磨の顔も丁寧に彩色されている 白猫で黒の斑 尻尾は黒で彩色
高さ50mm×横45mm×奥行33mm

 黒い斑の左手挙げ白猫
赤の首玉に金の鈴が描かれている
右手は抱いた達磨にかかっている
爪は赤で描かれている  


 以前から訪問したいと思っていたがなかなか実現しなかった。さらに新型コロナの感染拡大で営業しているかどうかもわからず出かけて行くのを躊躇していた。新規感染者はまだ多いが世間もだんだん平常を取り戻してきたのでこの機会に訪問することにした。(2022年12月20日)

住宅街にある
奥行きのある敷地に工房はある。
表札は「鈴幸」
門の前 玄関先
  鈴幸人形店は制作卸しをしているので
店舗は実質的にない。
玄関を入るとショーウィンドウに
入った人形がたくさん並ぶ。
玄関入り口の人形達
応接間に並ぶ人形達 張り子も多数ある
小型のものはほとんど練り物 犬張り子 無印良品の福缶も並ぶ
ウサギの張り子 十二支 犬張り子(小型は練り物)
数多くの練り物 残念ながらすでに制作していないものもある ネズミ2種
ミミズク 大きい方は張り子か? 小型の犬2体
手の離れた招き猫 トラの奥が最も小型の招き猫 先代と先々代?
おせち(これは縮緬を使用) 干支のウサギと小型招き猫 犬張り子の山
3代目はごく最近亡くなられたとのこと。
新型コロナで早く訪問できていれば
いろいろお話を伺えただけに残念だ。

左の画像は
本人はコメントしないが4代目のはず
とりあえず入手可能な招き猫は買った ただいま計算中



 鈴幸製の招き猫と猫

鈴幸製の招き猫
今回購入の中の3点

達磨抱き(左)と達磨抱え(右)は
無印良品の福缶に
使用されているようだ

いずれも左手挙げ

中央 招き猫(大)
高さ60mm×横37mm×奥行34mm

すべて赤い首玉
中央だけ前垂れ付き
白猫に黒の斑だが
中央(大)のみ三毛
抱いている(だいて)(左)か
抱えている(かかえて)(右)かで
達磨の描き方が異なる
 


鈴幸製小型と超小型の猫

招き猫と眠り猫
今回購入の中の4点

達磨抱えには従来からの顔に
朱のぼかしが入るタイプもある


右側の3点は画像が小さいので
個別に画像を掲載する


左から
 達磨抱え招き猫
高さ50mm×横45mm×奥行33mm

招き猫(中) 招き猫(小) 眠り猫
 
招き猫(中)と眠り猫は三毛
眠り猫には尻尾が見られない
 
達磨抱えは達磨の底まで
彩色されている。
彩色者の違いか?


 招き猫と眠り猫の詳細

招き猫(中)
招き猫(中)
中といっても3cm程しかない
赤い首玉に金の鈴

高さ31mm×横22mm×奥行21mm

左手挙げの招き猫
三毛に黒い尻尾
小さいが全体のバランスがいい
爪は赤で描かれる
招き猫(小)
招き猫(小)
現在製作されている
最も小さい招き猫
右手挙げ

比較は500円硬貨
(直径26.5mm)

高さ20mm×横16mm×奥行13mm
三毛で赤い首玉に金の鈴
黒い尻尾
右手挙げ
 猫が小さいので串を刺した穴は
大穴に見える
眠り猫  
眠り猫はこの一種のみ
赤い首玉に鈴はなし

比較は500円硬貨
(直径26.5mm)

高さ9mm×横16mm×奥行13mm
尻尾は描かれていない
寝ているのでからだに
折りたたんでいるのか
黒の斑に朱のぼかし
三毛か?
顔には朱のぼかしが入る
細く描かれる目で
寝ていることがわかる


 旧作の招き猫

旧作の二点  
旧作の二点:自宅保管品
右の招き猫は現在制作されていない
いずれも左手挙げ
白猫に黒い斑点
右の猫には尻尾が描かれていない
座布団座りも鈴幸さんに
展示してある中にいくつもある。
座布団付きと注文を受けて
制作しているのだろうか? 
旧作の達磨抱き招き猫座布団座り  
達磨抱き招き猫(旧作):自宅保管品

座布団座り

高さ49mm×横36mm×奥行36mm
(座布団を除く)


赤い座布団は最初から接着されている
白猫に黒い斑点
黒い尻尾
古いものは顔に朱のぼかしが入るものが多い
旧作の招き猫  
招き猫(旧作):自宅保管品

現在は手が身体から離れている
この招き猫は制作していないとのこと

どこの招き猫かわからなかったが、
今回の訪問で鈴幸製と判明した。
さらに小型の招き猫が制作されていて、所有しているが見あたらない。これも鈴幸製とわかった。

比較は500円硬貨
(直径26.5mm)

高さ38mm×横20mm×奥行22mm
 左手挙げで黒の斑点
手が離れているので
紐で首玉を結ぶことができる
尻尾は描かれていない
 猫に奥行きがあるが
座った実際の猫の体型に近いのかもしれない
赤で爪が描かれている


旧作(左):自宅保管品と
最近(右)の達磨抱き招き猫

旧作には朱のぼかしが入る
今回の購入品にぼかし入りが
なかったが

制作しているのがぼかしなしの
タイプだけ
だったのかは
うかつにも聞き忘れた。
新旧達磨抱き招き猫  
最近の達磨抱え招き猫
左は福缶タイプ

右の従来品は顔に朱のぼかしが入る
左の福缶タイプはぼかしなし
今回購入の達磨抱え招き猫二種  
参考資料
稲籾持ちねずみのメス(左)とオス(右)

稲穂を一束農家でもらい
稲籾を一粒持たせたとのこと

高さ43mm×横33mm×奥行32mm
半被を着ていないネズミの制作依頼を
受けてつくられたねずみ二体
福缶用か?

高さ43mm×横33mm×奥行32mm
小さな犬張り子
練り物なので張り子といっていいのか?

比較は500円硬貨
(直径26.5mm)

高さ24mm×横15mm×奥行25mm

今回撮影を忘れてしまったが
金沢から金箔張りの犬張り子制作を
依頼されたとのこと。
どこで販売されているのだろうか?


 今回の訪問では招き猫の収集を中心におこなった。残念ながらすでに制作されていない招き猫もあったのは残念だった。しかしいろいろな店に卸しているので浅草あたりで残っているものがないか探してみようと思う。
 招き猫以外にもおもしろい小物が多くある。犬張り子以外にも張り子はあるようなので近日中に再訪したい。






参考文献
全国郷土玩具ガイド2(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
埼玉県民俗工芸調査報告 第14集 鴻巣の赤物(埼玉県立民俗文化センター、2003)
さいたまの職人 民俗工芸実演公開の記録((埼玉県立民俗文化センター、1991)
竹とんぼ第52号(日本郷土玩具の会、2022 日本郷土玩具の会)