附馬牛人形(佐々木家)         

附馬牛人形
 種類:土人形
 制作地:岩手県遠野市
 現制作者: 佐々木孝和 (遠野郷佐々孝工房)

      佐々木孝和((1924(大正13年)−     ))
 
 制作者の佐々木孝和氏は食品販売業を営んでいたが、各地の民芸品に魅せられて蒐集してやがて自宅に民芸館をつくってしまった。その中の花巻人形と思われていた人形の中に花巻人形ではない人形があることに気がついた。いろいろ現地を訪ねるうちにむかし遠野にあった人形だと教えられた。村史を調べて小笠原元美と宇吉親子が制作していた人形と判明したが、明治期にすでに廃絶してしまっていた。
 やがて収集・調査により復元に取りかかった。10年ほどの試行錯誤の結果、かつての製法で人形を作ることに成功した。昭和59年(1984)ころから市販を始め、附馬牛人形として再興した。
 古い作品は譲り受けた土型を用いているが、新しいものは石膏型で制作している。また従来の作品以外に遠野を題材とした作品も創作している。人形の中には豆が入っており、振るとカラカラと音がする。
 附馬牛人形を蒐集、保存展示と復興するために平成6年(1994)に南部曲家を移築して郷土人形民芸村を開村した。
 阪本(1997)では後継者の氏名が記されていたがその後どうなっているかは不明。
 
 附馬牛人形の制作過程
    @土の採取 遠野の粘りの少ない土を使用
    A土を乾燥させ臼で砕き、ふるいにかける
    B石臼でひいた古い和紙を紙:土を4:6で練る
    C土を1週間寝かせて型押しと型抜き
    D天日で2〜3日乾燥させる
    E水と膠で溶いた胡粉を塗って下地をつくる 1日1回4〜5回繰り返す
    F天然素材から抽出した顔料を膠と調合して彩色 山いちごや山ぶどうの色素も使用される
    G乾布で磨いて艶を出す  
 

子福猫
子猫の鞠に五弁の桜 左手挙げ
黄色の前垂れ 赤い首玉
本来の花巻人形の招き猫に子猫を2匹付けたもの
この作品を作ったあと双子の孫が生まれたということで
子福猫となったということを聞いたことがある
この作品は民芸村開村前の作品
子福猫としては最初期のものと思われる




高さ208mm×横152mm×奥行132mm





底面には紙が貼られている  
 
背面に銘が入る  


招き猫
赤の首玉に同じ赤の前垂れ 長く黒い尻尾
右手挙げ 銘は入る

江戸時代から続く古い土人形に比べると
招き猫自体は明治時代になってから急速に広まっていった
花巻人形の招き猫も明治以降の作品である
古附馬牛人形にも猫はあるが招いてはいない
はたして明治期に入ってから
附馬牛で招き猫が制作されたかはわからない
これも佐々木さんにより花巻人形を元に制作したのだろう
同じような人形が花巻人形に見られる

高さ109mm×横72mm×奥行78mm
底面は和紙張り
薄い紅が入る 花巻人形と同じように上向き加減


鯛乗り猫  
うろこがカラフルな鯛に乗る 赤の首玉と前垂れを付ける
右手挙げの白猫(黒斑) 鯛の裏の一部は彩色されていない
花巻人形定番の鯛乗り猫
古作の附馬牛人形にこのような型があるのかは不明であるが、
古い附馬牛人形にある「鯛乗り猫鼠」は
鯛の型がほとんで同じでサイズのこの作品に近い
古い鯛の型に招き猫を組み合わせた可能性がある
「鯛乗り猫鼠」(郷土人形図譜「附馬牛人形」 No.23)

堤人形には「鯛乗り猫鼠」があったが
花巻人形にはあったのだろうか


高さ90mm×横113mm×奥行50mm



底部は和紙が貼られている  


鯛抱き猫
両手で鯛を押さえる 黄色い首玉
鯛のうろこの彩色は鯛乗り猫と同じ 裏面に銘が入る

これも花巻人形定番の鯛抱き猫

高さ89mm×横92mm×奥行78mm

底面に和紙が貼られている  


附馬牛人形への思いか  
附馬牛人形への思いか目のまわりにうっすら紅がかかる  


頂き物のタオル
おそらく上の招き猫を購入したときにいただいたもの
この時、制作作業をしていた招き猫を購入した
撮影するに当たり、初めてタオルを広げてみた
おそらく出張実演であったと思うが、どこで作業をしていたのか(購入場所)は覚えていない
タオルに描かれているのは佐々木さんが創作した遠野物語の人形達
岩手遠野郷人形師 佐々木孝和 附馬牛人形 遠野物語の世界









参考文献
郷土人形図譜「附馬牛人形」 (日本郷土人形研究会、2002 郷土人形図譜第U期第3号)
第27回特別展東北の郷土人形(遠野市立博物館、1993 遠野市立博物館)
郷土玩具 職人ばなし(阪本一也、1997 婦女界出版社)
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)
日本土人形紀行vol.8 今戸人形・芝原人形(日本土人形資料館 企画展パンフレット、2013)
東京都江戸東京博物館 調査報告書第4集 今戸焼 (江戸東京博物館、1997)