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堤人形
 種類:土人形
 制作地:宮城県仙台市
 現制作者:芳賀強
 
 堤人形の歴史については堤人形古作で扱う予定。

 江戸時代から続く堤人形の制作者は芳賀家のみとなってしまったが、俵有作(1978)によれば下記のようになっている。

初代      −1682       −天和2年
二代     −1728       −享保12年
三代     −1735       −享保20年
四代     −1749       −寛延2年
五代     −1765       −明和2年
六代     −1770       −明和7年
七代 佐一郎     −1774       −安永3年
八代 佐四郎     −1805       −文久2年
九代 佐五右衛門     −1889       −明治22年
十代 佐四郎養介     −1924       −大正13年 
十一代 芳賀佐五郎 1901−1978  明治34年−昭和53年
十二代 芳賀強 1941−      昭和16年−       
※  俵有作(1978)より
   旧暦の関係で西暦は1年ずれがあるかもしれない
   現当主の芳賀強さんは十三代目とのことで一代ずれている


 仙台では奥州街道沿いに足軽を配置してその防備に当たらせた。しかし藩からの給付だけでは生計が成り立たないため、付近で産出する良質の陶土を使い製陶を副業とした。その際に生活雑器以外にも信仰土偶なども制作していた。江戸中期より信仰土偶からひな人形や風俗人形などの土人形の制作が始まった。
 最盛期は江戸期であるが江戸時代末期になると衰退期に入っていった。やがて明治を迎え、さらに衰退していった堤人形の制作者は4軒のみとなってしまった。現在では江戸時代から続く制作者は芳賀家1軒のみとなってしまった。(佐藤家では宇津井家などの型を引き継いで制作している)。
 その芳賀家では陶器と土人形を制作していたが、芳賀佐四郎(養介)の代に土人形専業となった。さらに現当主芳賀強の代になり人形の卸しは辞めて受注制作に切り替えて現在に至っている。したがってタイミングが合わないと次の制作まで何年か待つことになる。丁寧な作りで郷土人形(玩具)というよりは工芸品のような風合いを持っている。

招き猫  
胸に宝珠 左手挙げ
黒斑に水色の縁取り 最近は背中に当たり矢が描かれている

招き猫の発祥は江戸最末期といわれているので
この招き猫も明治に入ってからの型かもしれない
独特の風合いをもっている

白猫であるがわずかにクリーム色を帯びた下地は
他では見られない
左手挙げで胸には宝珠
身体全体にある黒い斑には水色の縁取り
花柄は描かれていない
尻尾の先端は黒で毛並みが描かれる
見物内側は朱で彩色され耳の後ろには黒い毛がある
つま先にも黒い毛が描かれる
底部には「つゝみ」の刻印


高さ185mm×横100mm×奥行130mm
底に 「つゝみ」の押印
大きく見開いた目  胸の宝珠



鯛くわえ猫
 このポーズの猫も東北の各地にある。鯛抱きが多い中、鯛を咥えている。上目遣いの目が印象的。

鯛くわえ猫    
上目遣いの目にはキャッチアイ 尻尾の先端のみ黒 
咥えている 裏面も彩色されている 

赤い鯛を咥えた黒斑の白猫
黒い斑には水色の縁取りと花模様
耳の中は赤で彩色
目は黄色で黒い瞳は上向き
瞳にキャッチアイがある
赤い隈取りのようなラインが目の下にある
鼻先は招き猫と同じように黒い
尻尾の先は黒で塗られている
土鈴になっているが吊す紐はない

戦前に制作された作品の中には
首玉があったり、黒斑の中の花模様がなかったり
尻尾が黒で描かれているものもある(型が異なる)

高さ67mm×横118mm×奥行56mm 
 土鈴になっている  
 
 「つゝみ」の押印   



鯛車
 鯛車とは鯛を載せた山車のようなものだが、いつの間にか車輪がなくなり台座と鯛の部分のみで名前だけが残ったのだろうか。

鯛車 
猫の視線はねずみからやや外れる なぜ波の台に乗っているのだろう
迷惑そうな鯛の顔がおもしろい  猫の柄は「鯛くわえ猫」と同じ

赤い鯛に乗った猫がねずみを追いかける(狙う)構図となっている
猫の大きさは小さいが丁寧に描かれている
時代(作者?)によって猫の視線が異なるのもおもしろい

この台座の波模様は干支ものの子(ね)にも使われている

高さ140mm×横185mm×奥行80mm  
底は平坦  
並の部分に「つゝみ」の刻印 人形(時代や作者)によって猫の視線が異なる


 これ以外にも猫の土人形はいくつかある。座り猫(古作に掲載予定)や猫の香炉などもある。始めて訪問した時はちょうど猫の香炉を制作しているときだった。
猫の香合と背中に当たり矢の招き猫は「八郷の日々」で見ることができます。




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    仙台メディアアーク  せんだい教材映像アーカイブ 「堤人形」(2003) ※学校教材用映像(18分)
    仙台観光情報サイト せんだい旅日和 堤人形製造所
    JID AI online 「間宮林蔵が樺太を探検した文化年間に創業 芳賀堤人形製造所の堤人形」
    「焼き物の町、堤町で生まれた二つの美 堤焼きと堤人形」 ござりすた仙台さんのアルバム(fecebook)
    八郷の日々 「堤人形の猫」





参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
「鯛車 猫」(鈴木常雄、1972 私家版)
郷土玩具図説第七巻(鈴木常雄、1988覆刻 村田書店)
「面守」(鈴木常雄、1966 私家版)・ 「天狗帖」(鈴木常雄、1967 私家版)郷土玩具図説第五巻(鈴木常雄、1985覆刻 村田書店)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)
日本の土人形(俵有作、1978 文化出版局)
みちのくの人形たち(仙台市博物館特別展図録、1996 仙台市博物館)
東北の古人形(芹沢長介、1991 芹沢_介美術工芸館)
第27回東北の郷土玩具(遠野市博物館特別展図録、1993 遠野市博物館)