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山口人形(水原人形)
種類:土人形
制作地:新潟県阿賀野市山口町(旧 北蒲原郡水原町山口)
現制作者:今井和博(八代目)「今井人形や:鳩屋」
白鳥の飛来で有名な瓢湖の近くで制作されている土人形。旧地名の水原町山口から山口人形とも水原人形ともいわれる。
山口人形は19世紀初頭の文化年間に伏見人形の流れを汲んで制作されたといわれている。型も伏見の型を抜き型した作品が多いという。
二代目までは木や竹製の玩具を制作していた。三代目長吉の時代より土人形も制作品に加わった。四代目伝蔵から本格的に土人形の制作が始まったという。したがって土人形の歴史としては幕末以降と考えられる。しかし大正時代になり需要が減りさらに日中戦争や太平洋戦争で材料の入手も困難となり五代目徳四郎の代で人形制作も中断を繰り返した後、戦時中ついに制作中止されてしまった。昭和31年になり郷土玩具研究家や地元から復活を望む声が上がり制作を再開した。
作品には土人形以外にも木馬や首人形などもあった。特に三角だるまが有名で年賀はがきの意匠になったこともあった。
六代目徳四郎が長寿で100歳まで制作を続けたのでその影に隠れてしまったが七代目伝三も多くの作品を残した。「町だより すいばら」1993年9号の記事によれば三角だるまは達磨の制作は子の伝三が担い、徳四郎が顔を描いていたようである。
なお、三角だるまの歴史に関しては下の「みなと人形本舗」の記事が詳しい。
※三角達磨は今井家だけの作品でなく越後地方で広く制作されていた。
今井徳四郎90歳になった記念に出版された「人形と共に八十年」 昭和62年発行なので92歳との時になる |
初代 | 今井伝十郎 | ||
二代 | 今井長助 | ||
三代 | 今井長吉 | ||
四代 | 今井伝蔵 | −1926 | 弘化 年−大正15年 |
五代 | 今井徳蔵 | ||
六代 | 今井徳四郎 | 1895−1995 | 明治28年−平成7年 |
七代 | 今井伝三 | 1930−2013 | |
八代 | 今井和博 | 1968− | 昭和43年− |
※5代目徳蔵は早世したので徳四郎は伝蔵から人形作りを学んだ
今井伝三さん 2003年中野ひな市で |
山口人形の招き猫は型自体は比較的新しいように見える。大小があるがいずれも左手挙げである。彩色も三毛と白猫がある。いずれも赤い首玉に金の鈴を付けている。彩色は赤・黒・金・ピンクといたってシンプル。
白猫小と大 | 三毛猫小と大 |
三毛猫三種 左は大、右は小 |
招き猫(大) | 左手挙げ | ||
尻尾に彩色なし | |||
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招き猫小 | 左手挙げ | ||
尻尾の形態が大とは異なる | |||
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最初の購入品 | ||
現在所有している中で 最初に入手した山口の招き猫 わずかにサイズが異なる 顔つきも微妙に違う また首玉(リボン)の結び方も異なる 尻尾は他の大と同じ形態 今井徳四郎の作か伝三の作かはわからないが、 晩年の徳四郎の作には 制作した時の年齢が入っているものが多い 今井伝三の作と見なした方が自然だ |
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左手挙げ | ||
見かける招き猫の首玉の結び目は 上の画像のように 丸が3つ連なったようになっており このようなリボン結びは見かけない 高さ117mm×横77mm×奥行70mm |
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この猫だけ首玉の結び目が異なる |
山口人形と中野土人形の招き猫 | ||
編集していて気がついたのだが 山口人形の招き猫はフォルムが 中野土人形(奈良家)の招き猫に ひじょうに似ている この2点で比較すると山口人形の方が ぽっちゃり系だが、小だとやや細身になる 中野土人形ははっきり貯金玉の 型抜きといっている 山口人形の招き猫はいつ頃の作かは わからないが比較的新しいと思われる 同じような型から 抜いたのかもしれない ここではサイズの多少の差異は 問題とならない 型抜きすることにより 原型より大きさは小さくなる もっとも貯金玉の招き猫自体似たような 体型をしているので 同じ貯金玉から抜いたとは いえないが似ているのである |
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山口人形招き猫(大) | 中野土人形招き猫 |
昭和52年(1977)の年賀はがき意匠に 採用された山口の三角だるま |
山口人形の作品
三角達磨も複数所蔵しているがみつからない。出てきたら追加する予定。
玉乗り午 | |||
赤い球を抱える午 高さ91mm | 基本的な色の彩色 | ||
添付されていた栞 | |||
寿抱え犬 | |||
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川崎巨泉の記録によれば昭和初期の今井徳四郎作の三角達磨は すでに現在に近いデザインとなっているが、 戦後再興された作品はさらに簡略化された 大らかなデザインとなっている 比較してみるとおもしろい。 三角達磨起上がり 巨泉玩具帖(おおさかeコレクション) 手持ちの三角達磨はみつかったら左の画像と入れ替える予定 |
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峯岸勘次(2001)より |
越後名物三角達磨 みなと人形本舗
新潟県の郷土玩具
三角だるま 新潟文化物語
阿賀野市・三角ダルマ・今井徳四郎 2022 阿賀野市ブログ応援隊
参考文献
人形と共に80年(今井徳四郎、1987 私家版)
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
全国郷土玩具ガイド1(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
郷土玩具職人ばなし(阪本一也、1997 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
日本郷土玩具 東の部(武井武雄、1930 地平社書房)
日本の土人形(俵有作、1978 文化出版局)
全国郷土人形図鑑(足立孔、1982 光芸出版)
日本の郷土玩具(薗部澄・阪本一也、1972 毎日新聞社)
日本郷土玩具事典(西沢笛畝、1964 岩崎美術社)
縁起だるま(峯岸勘次、2001 上毛新聞社)
おもちゃ画譜(川崎巨泉、1979覆刻 村田書店)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)