金谷土人形の作者を訪ねる・・・ついに行ってきました

その1 金谷の招き猫を手に入れる
幻の金谷土人形の招き猫(古作)
 2001年春の京都大骨董市で思わぬものを入手しました。そうです、金谷の招き猫です。
 2000年の伊勢招き猫まつりで金谷土人形が平成8年に復活したことを知り、招き猫も入手してきました。金谷土人形は「静岡の土人形」(日本雪だるまの会)を見ていたので存在は知っていましたが、招き猫があることは知りませんでした。また復活させた製作者の小澤和賀代さんが80年以上前に廃絶した金谷土人形の作者とどのような関係にあるのかもわかりませんでした。

招き猫が呼んでいる
 今回の出会いは京都大骨董市でした。各出店を招き猫を見逃さないように、でも他の人に買われていかないように足早にキョロキョロしながら見ていると、古ぼけた招き猫が目にとまりました。何やら汚れたかなり年季の入った招き猫のようです。それほど古い猫にも見えなかったのですが、手に取ってみると骨董屋が貼った小さなシールに「金谷」の文字と金額が書いてありました。「エッ!」と思いしげしげと前から、後ろから、下から眺めまわしました。汚れのように見えたのは彩色の上から塗られたニスの経年変化でした。底に貼られた和紙はなくなっていましたがそれ以外はほぼ無傷の完品です。それに何より穏やかでいい顔をしているのです。「これが幻の金谷の招き猫か!」思わず抱きしめたくなりました。ただ金谷の招き猫はオリジナルの現物を見たことがないので本物かどうか判断はできません。
 しかしここで出会ったのは運命、連れて帰るしかありません。早速、店の主人に猫の話を伺うと「地元で出」たということ。雪だるまの会の人にもてもらったところ本物に間違いないと言われたそうです。売ってほしいと言われて、売れ残ったら譲るということになっていたらしい。ご主人曰く「今回の目玉商品です」。
 敵にほしい気持ちを悟られないように気持ちを落ち着け、いろいろと情報を得ながら、また棚に置く。そうすると招き猫が「買って!」と呼ぶ。また手にとって眺める。何回か繰り返し、いよいよ値段交渉。主人が値引きする。こちらの最終予想値より高い。再度交渉。敵もガードが堅い。こちらが最後通告の値を告げる。主人うなって「間をとって○○円でどうですか」。予想より1000円高いがこれ以上は無理できそうもないので手を打ってついにわが家の一員となりました。
 帰宅した後、小澤さんの金谷土人形と比べてみました。復元版は底が完全に閉じている以外はかなりオリジナルに忠実に再現していることがわかりました。彩色で一つ違う点は復元版にある黒の斑点の中にある松葉などの模様がオリジナルにはないことです。それ以外は首輪の模様や左手の茶色の斑点などもきちんとオリジナル版どおりでした。
 また尻尾の右にある作者の刻印もしっかり刻印として復元版に見られました。何人か確認されているかつての金谷土人形作者の誰のものであるか、調べてみようと思っています。
 近々、料理屋を営みながら金谷土人形を復元された小澤和賀代さんを訪ねて復元版の型のことなどいろいろと伺ってみようと思っています。

金谷土人形の招き猫(古作)

オリジナル版金谷土人形 後頭部に「福」の文字 底・・・和紙の貼ってあった後がわかる
       
尻尾の右の刻印

復元版(小澤和賀代 作)

          

 金谷土人形「小澤和賀代さんのHP」へのリンク

                  続く


その2 金谷土人形製作者、よし善の小澤さんに突撃取材

 2001年6月16日、いつものとおりアポイントなしです。とりあえずインターネットで現地の地図を手に入れあとはその場任せの取材です。
 金谷土人形を復活させたのは地元で郷土料理店「よし善」を開いている小澤和賀代さんです。小澤さんは「たくみの会」(詳細は訊いていないので不明)のメンバーとして『日本雪だるまの会』の強力なバックアップを受け平成8年から復元作業を進めているそうです。
 今回はお話を伺い、よし善で夕食を食べられればいいかなという気持ちだったので、家を出発したのは昼過ぎでした。東名高速をとばし、東名牧ノ原ICをおり、現地に着いたのは2時を過ぎていました。新金谷駅までは比較的順調にたどり着けたのですが、あらかじめ手に入れた地図でもよく場所がわかりません。川越し資料館の駐車場(裏側にある。表の方は有料駐車場になっている)に車を止め、資料館を見学し、情報を入手しました。情報を頼りに徒歩で偵察に行きました。駅からは近いのですが、車で直接行くとなると、ちょっとわかりにくいかもしれません。残念ながらちょっと道草を食っていたので、午後の休憩時間になってしまいました。営業の再開は午後5時からでそれまでSLなど見学して時間をつぶしてから再度伺うことにしました。
 ところで話にはきいていましたがここがSLが走っている鉄道(大井川鉄道)の駅とは着くまで知りませんでした。しかもこの新金谷駅が車両基地となっているので整備などでSLが停車しています。駅前には昔の鉄道車両や大井川の川渡しの「川越し資料館」もあります。
 日も傾き、まわりが薄暗くなってきました。「よし善」は住宅地の中にありますが、駐車スペースはかなりあります。外から見るとちょっと値段が高そうな感じを受けますが、食事の値段は手頃なところです。
 玄関をくぐると、右手に高山さんの旭土人形の大招き猫が迎えてくれます。建物の雰囲気は古い建物を移築したのか、古材を用いて立てたように見えます。とりあえず名物の「菜飯」と「豆腐味噌田楽」のセットに「新茶の天ぷら」を追加して注文しました。
 待ち時間の間、店内に展示されている「金谷宿の土雛」(主催:たくみの会、所蔵:日本雪だるまの会会員)を見学していました。この展示は東海道400年祭の一環として今年1年間をかけて次の日程で展示をおこなっているものです。
      平成13年1月12日〜 3月30日  「縁起物」
             4月 1日〜 6月29日  「武者物・金太郎」
             7月 1日〜 9月29日  「風俗・童子物」
            10月 1日〜12月26日  「歌舞伎物」

 食事も終わり、店員の方に土人形の在庫をうかがったところ、「ちょっと待ってください」と言って代わりに対応していただいたのはご主人でした。残念ながら在庫はなく注文を受けるようになるということでした。それでは土人形の入手に関しては次に機会にするとして、いろいろとわかる範囲で情報を得ることにしました。

今回の現地取材でわかったこと(ご主人の話です)
 @小澤さんの製作している招き猫(大)は旭土人形の高山さんの型を使用している。
 A猫の黒い斑点の中に描かれている松葉などの模様は後から小澤さんによって加えられたもの。小澤さんの初期の製作品にはなかった。
 
 残念ながらご本人にお話を伺うことができませんでしたので、招き猫の関して詳しいことはわかりませんでした。ただ一番問題になっていた小澤製の招き猫の斑点にある松葉模様に関して解決したのは大きな成果でした。また、以前から製作に関して旭土人形の高山さんから指導を得ていることは聞いていたので、手持ちの旭土人形の招き猫と比べてひじょうに形が似ていることは気がついていました。てっきり金谷の招き猫から型取りしていたと思っていた小澤製招き猫ですが、高山さんの型から抜いてもオリジナルの金谷土人形とほとんど変わらない(大きさ以外は同じ)招き猫ができあがっているのはびっくりです。
 これから型取りは別にしても彩色はオリジナルの金谷招き猫を基に描いているはずですので、そのような疑問点を手紙で尋ねてみようと思っています。最終的にはもう一度直接訪ねてみるつもりです。

川越し資料館や
昔の車両展示がしてある
夢プラザ
川越し資料館の展示 川越し資料館展示
豪華な蓮台


               さらに続く