長浜土人形(日下家)
種類:土人形
制作地:島根県浜田市長浜町
現制作者:日下悟 日下(ひのした)義明商店
日下家 | ||
日下義明 | 初代 | 大正中期生まれ |
日下悟 | 二代目 | |
日下義明商店で制作されている招き猫は前垂れ付きとなしがありそれぞれに白猫と黒猫がある。以前は二枚型による型抜きで制作されていたが現在は流し込みによって制作されている。下記の我が家にある猫はすでに流し込みによる制作である。
長浜人形は博多や伏見の影響を受けている。前垂れ付きの招き猫も津屋崎人形と似ている。三次人形でも同様のタイプがあるので日本海航路による交易の影響を受けているのだろう。戦後の型の前垂れなしは伏見の猫に似ている。
長浜人形の資料は調べていくと意外に少ない。西沢笛畝(1964)でも廃絶となっている。また神楽の里だけに神楽面の方が紹介されることが多いようである。
長浜人形は朝鮮の陶工の技術を習得した本地屋治平により万治年間(17世紀中盤)に始まった陶器作りが最初とされている。その後明和年間(18世紀中盤)に陶器制作の合間に土人形を制作したのが長浜人形の始まりとされている。このころ本地屋は姓を永見とし、永見房造が初代となり代々房造を継いで五代目まで土人形を作り続けた。江戸末期から明治初期が最盛期であったが、だんだん売れ行きも落ち 明治末期には廃業してしまった。その後、大正年間に一時復活して戦前まで制作された。戦後に長浜人形株式会社(十一代房造(永見美房))ができ一時復活したが短期間で制作を中止してしまった。その後、そこの工人により長浜人形が作られるようになった。日下義明や初代岩本竹山もその一人である。
木島家では木島政治により明治初期に制作が始まったが明治末期には廃業した。その後、田村初太郎が後を継ぎ昭和30年頃まで制作された。
武井武雄(1930)には制作者として、きのえね商会の高橋常太郎の名がみられる。これは一時復活したときの制作者だろうか?詳細は不明である。
なお2012年になり長浜人形の伝統工芸士・安東三郎氏(1928−2023)に師事した土人形師・渡辺真奈美さんが「島根の招き猫工房」を立ち上げ、島根県から長浜人形の伝統工芸士の指定を受け、伝統的な工法で招き猫以外にも精力的に制作をしている。
渡辺民芸工房社の渡辺石芳氏も安東三郎氏に師事している。
歴代長浜人形の制作者
永見家 | ||
城佐世 | 明和年間創始 | |
永見房造 | 初代房吉 | −文政3年(1820) |
永見平次郎 | 二代目房造 | |
永見平治郎 | 三代目房吉 | |
永見国太郎 | 四代目房吉 | |
永見亀吉 | 五代目房吉 | 安政6年(1859)−大正6年(1917) |
木島家 | 明治初期から制作開始 | |
木島政治 | 初代 | 文政4年(1821)−明治37年(1904) |
木島仙一 | 二代目 | 文久3年(1863)−昭和7年(1932) |
木島清太郎 | 三代目 | −昭和21年(1946) |
田島初太郎 | 後継 |
岩本家 | ||
岩本竹山 | 初代 | 大正中期の生まれ |
岩本竹山 | 二代目 |
安東三郎に関しては詳細は不明。
日下義明商店の招き猫 | |
戦後の型による 左手挙げの黒猫と白猫 赤い首玉に金の鈴 サイズは小にあたる 高さ155mm×横85mm×奥行100mm |
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この型に前垂れを付けたタイプもある | |
白猫の汚れのように見えるのは 薄墨のぼかし |
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白猫にはぼかしが入る | |
尻尾は太い | |
立派な尻尾 | |
先端が太い尻尾は前足に届く | |
左手挙げ | |
前垂れ付きは所有していたはずであるが行方不明。高さ225mm×横145mm×奥行145mmと記録にはある。
見つからないときは再購入して画像を追加する予定。
長浜人形(岩本家)へ
長浜人形「島根の招き猫工房」
型は下記のウェブマガジンによれば前垂れ付きは大正5年(1916)、福の素では大正4年(2015)、前垂れなしは昭和4年(1929)、福の素では昭和23年(1948)とある。年代の違いはサイズの違いにより型起こしの時期がずれているのかもしれない。
日下義明は俵有作(1978)の出版当時60歳なので大正時代の型は日下義明の年齢とは合わない。これは戦後一時復活した時はたらいていた長浜人形株式会社時代に使われたさらに古い時代の型かもしれない。前垂れなしの型は日下悟氏によれば父である日下義明の作ではないかとのことである。
長浜人形 ウェブマガジン「ひととき」 2020
参考文献
招き猫尽くし (荒川千尋・板東寛司、1999 私家版)
全国郷土玩具ガイド3(畑野栄三、1992 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
福の素24号(日本招猫倶楽部会報、1999)
招き猫博覧会(荒川千尋・板東寛二、2001 白石書店)
日本郷土玩具 西の部(武井武雄、1930 地平社書房)
日本の土人形(俵有作、1978 文化出版局)
日本郷土玩具事典(西沢笛畝、1964 岩崎美術社)
中・四国おもちゃ風土記(津田一男、1977 中国新聞社)