帖佐人形      調査続行中

帖佐人形
 種類:土人形
 制作地:鹿児島県姶良市(旧 姶良郡姶良町)
 現制作者:折田貴子
  折田太刀男(   −1984)・・・・折田貴子

 文禄慶長の役の際、朝鮮から連れ帰った陶工が帖佐村に窯を開いて帖佐焼を始めると共に人形制作を始めたのが始まりといわれている。
 姶良市の帖佐人形パンフレットによれば、最盛期の大正年間には40あまりの窯元があった。大正から昭和初期には窯が集中していた高樋集落付近には前田万吉、北村宗迪、池田彦三郎、d松弥太郎、島田直次郎、柳田岩熊、折田半次郎、永井満男、山口喜之丞、折田熊次郎、森仙次郎、八代彦熊の制作者の氏名が見られる。また日本郷土玩具 西の部(武井武雄、1930)には柳田岩熊、池田彦熊、山田喜之亟、島田直次郎の制作者がみられる。需要は近隣が中心で遠方を販路を有するのは柳田岩熊のみであったという。戦前でその制作は途絶えた。全国郷土土人形図鑑(足立孔 1982)では戦前で廃絶し、当時の制作者として、柳田岩熊、池田彦三郎、山口喜之丞、島田直次郎、d松弥太郎、d松伝の氏名が見られる。
 畑野栄三(1993)では昭和初期には4名の制作者の名が見えるとあるがこれは武井武雄(1930)を元にしたものであろう。
 その後いったん廃絶したが、町役場の勧めもあり1952年(昭和27年)d松伝(あべまつつたえ)によって一時復活するが、長くは続かず再び廃絶する。平田(1996)によれば、戦後の一時期、鹿児島工芸研究所が中心となり前田正義が小型の人形を作っていたが没後廃業したとある。これに関しては詳細は不明である。
 1970年(昭和45年)折田太刀男・湯田晃ら有志によって帖佐人形保存会が結成され帖佐人形が復活した。その後、折田太刀男により制作が続けられた。晩年の5年ほどは折田太刀男が病弱であったため、孫である現制作者・折田貴子がほとんど制作していたという。その後、折田貴子に引き継がれてが現在に制作が続けられている。型は伏見系のものが多い。

 過去の記録を見ると1998年の3月に九州を回りいろいろな制作者を訪ねている。その際に折田さんのところにも寄っている。折田貴子さんは不在であったが家人に対応していただいた。残念ながら猫の在庫がなく、そのときは飾り犬を購入した。


帖佐人形の座り猫  
尻尾は虎柄 大型の猫同様に尻の部分に黒い斑
金の鈴が付く 裏の彩色は耳以外ない
現制作者折田貴子さんにより
1990年代に制作された小型の座り猫

高さ80mm×横70mm×奥行49mm

彩色は白黒以外は赤(朱)・黄・金のみ 
裏面は彩色されていない
赤に金の模様の首玉に金の鈴がつく
尻尾は黄色で虎柄
底はない
狆はいろいろなサイズがあるようだが
猫に関してはこの小品と少し大きい鞠猫だけである。

底はない  


左の大正から昭和初期にかけての窯元と比較すると
現制作者の住所付近に「折田半次郎」の名前がある。
現制作者の関係者であるかは不明。
帖佐人形パンフレット(姶良市)より

   
 帖佐人形のパンフレットによれば、大小区別しなければ79種類が確認されているという。その中で動物は7種、猫に関しては「猫手まり遊び」と「猫」の2種類が挙げられている。おそらく座り猫はこの「猫」であろう。鞠抱きあるいは鞠持ちは「猫手まり遊び」のことである。なぜかよく見かけるのは座り猫の方だ。
 昭和の初めに途絶えた帖佐人形が昭和40年に折田太刀男等の有志による帖佐人形保存会が結成されて復活したが、その際にいろいろな窯の型が集められているようなので、現在折田家で制作されている人形はいろいろな窯元のものが混ざっている可能性がある。(詳細は不明)

古作の座り猫 
高さ170mm 豪華な前垂れ 
裏側は耳も塗られていない 裏の彩色はなし
伏見系の飾り猫で現在製作されている
猫に比べてかなり大きい
裏面の彩色なし
二枚型で底はある
白黒以外は赤・黄・青が使われている
赤と黄の二重の首玉に
赤・黄・青の前垂れの飾りが付く

あごに黒い斑、尻尾は虎柄
尻の部分にも大きな黒い斑

※古作の画像7枚は名古屋のNさんによる
二枚型で底がある  
尻尾の黄色は退色しているが、黄色と黒の虎柄
 
  武井武雄(1930)より
帖佐の座り猫
右上の子抱き?が高さ1尺なので
画像の古作とほぼ同じ大きさ 

平田(1996)より
帖佐の座り猫古作
大きさは12cm×12cmとある 
下記MBCブログの中の
帖佐人形古作の中に気になる黒猫がいた
帖佐人形かどうかは不明だが
下半分がまだ彩色されていない猫目の黒猫
はたして帖佐人形なのだろうか? 


目呂二百猫の帖佐座り猫  
上の武井(1930)の座り猫を
忠実に再現していることがわかる
 





          
 現在、あるいは最近制作された鞠猫。正式名は「猫手まり遊び」。

鞠猫1  
「猫手まり遊び」 麻の葉模様の御殿鞠
虎柄の尻尾 背面の彩色なし

折田貴子作の鞠抱き猫
黄と赤の首玉に金の鈴が付く
前垂れは水色・緑・薄いピンク
目(瞳)は黒丸でなく
笑ったような優しい顔つきになっている
高さ約15cm

画像5枚は名古屋のNさんによる




平田(1996)より
平成初期ころと思われる
折田貴子作の猫2体
底面に穴はない  
  


折田家の鞠猫か?  
サイズは同じで、この2点は同じ型から抜かれたこともわかった 
鞠猫2  
麻の葉模様の鞠を抱く 前垂れの1枚は白く見えるが薄いピンク
黄色の尻尾は虎柄 背面は彩色されていない
サイズは同じ
高さ148mm×横112mm×奥行66mm

首玉は上が黄、下が赤で金の鈴が付く
前垂れの一枚は白く見えるが、薄いピンクで彩色されている
退色ではなさそう、修正?の途中?
赤い鞠には麻の葉模様と金で三ツ星?
底面には穴がある
折田貴子さんの猫の瞳は横長で優しい目つきとなっている
この猫も折田貴子作と思われる

底面に穴が開く
鞠猫3  
御殿鞠鞠は帖佐の基本色の黄・赤・緑・群青と金で華やか
虎柄の尻尾 背面の彩色なし 耳の裏面も彩色なし
首玉は上が赤で下が黄で金の鈴が付く
前垂れは定番の群青、緑、赤
底に穴がある
瞳は丸目
目の描き方によって表情が大きく異なってくる

確証はないが折田太刀男作か?
あるいは折田貴子の初期作?

底面に穴が開く





 なお。帖佐人形に関しては次の姶良市のHPが詳しい。
        「素朴に凜々と心つなぐ帖佐人形」(姶良市HP) (リンク切れ)

 Felia! 帖佐人形とは「素朴さの中に美を忘れない」ことだと、祖父に教わった フェリア 南日本新聞

 MBC南日本放送ブログ あなたの街のささえびと 「帖佐人形 折田貴子さん」

 姶良町歴史民俗資料館 姶良市デジタルミュージアム 「帖佐人形」  もしリンク切れの時はねこれくと内の保存ファイルからどうぞ「帖佐人形」
    姶良市デジタルミュージアムトップページ

 JTCO日本伝統文化振興機構 「帖佐人形}



参考文献
「帖佐人形」パンフレット 姶良市歴史民俗資料館
日本郷土玩具 西の部(武井武雄、1930 地平社書房)
全国郷土土人形図鑑(足立孔 1982 光芸出版)
全国郷土玩具ガイド4(畑野栄三、1993 婦女界出版社)
おもちゃ通信200号(平田嘉一、1996 全国郷土玩具友の会近畿支部)
日本の土人形(俵有作、1978 文化出版局)